5月30日、待ちに待った『ショパン・フェスティバル 2011
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表参道 〜ショパンとその周辺〜』がいよいよ開幕しました!このフェスティバルは5月30日(月)〜6月4日(土)にかけての6日間にわたって開催され、各日とも昼にランチタイムコンサート、夜にピアノリサイタルという2つの演奏会をご用意しています。
本日の演奏会は、『レクチャー&コンサート《ショパン
with
フレンズ》〜ロマン派を彩った4巨星〜』というタイトルのもとで開催され、ピアニストは高橋多佳子さんでした。前半はショパンを中心に、メンデルスゾーン、シューマン、リストの作品で構成されており、同時代を生きていながら、4人の作曲家のまったく異なる音世界を知ることができたと思います。後半はショパンの作品のみで構成され、全体としてとても充実したプログラムでした。そして、今日の演奏会はふだんの演奏会と異なり、ピアニストの高橋さん自身が、作品が誕生した歴史的背景や、曲に対する高橋さん自身のイメージなど、興味深いお話を交えながら演奏を聞かせてくださいました。
前半最初の曲はショパン《12の練習曲》op.
25-1「エオリアンハープ」でした。絶えず移ろいゆく和声進行とそこから浮かび上がる右手の旋律との調和は、実に見事でした。次に、メンデルスゾーン《無言歌集》より「ベネツィアのゴンドラ」(op.
62-5)、「春の歌」(op.
62-6)を続けて演奏して下さいました。メンデルスゾーンの旋律をひときわ美しいと感じ、いつ弾いても聴いても涙腺がゆるむほどだとおっしゃる高橋さん。そんな高橋さんが奏でるメンデルスゾーンからは温かさや優しさがあふれていました。シューマン《アラベスク》op.
18では、ショパンともメンデルスゾーンとも違う響きを楽しむことができました。前半最後のリスト《パガニーニ第練習曲集》より「ラ・カンパネラ」では、高音部の音色が非常に輝かしく、曲最後の盛り上がりでは低音部を支えとし、力強さの加わったとても壮大な演奏でした。
休憩後には“質問コーナー”という時間が設けられており、まず高橋さんからショパンと今日演奏する残りの3人の作曲家とのそれぞれの関係について、彼らの間でやりとりされた手紙などを紹介しながら、短いレクチャーがありました。その後、お客様から質問を受け付け、後半の演奏に入りました。
《ノクターン》op.
9-2では弱音や比較的長い装飾音が多用されていますが、その繊細な響きはショパンのノクターンというジャンルをよく捉えていたと思います。《バラード
第3番》op.
47では、演奏の前に、ショパンがこの作品の作曲にあたって、インスピレーションを受けたとされるミツキヴィチの「水の精」という詩を原語のポーランド語と邦訳で聞かせて下さいました。詩のもつ雰囲気やそこから連想される情景を、高橋さんの演奏とリンクさせて聴くことができたと思います。《ポロネーズ
第6番》「英雄」op.
53では、ポロネーズの力強いリズムが耳に心地よく響きました。
会場のお客様の鳴り止まない拍手に応え、アンコールとして《幻想即興曲》を聞かせて下さいました。アンコールに《幻想即興曲》とは、また贅沢なプログラムですね。聴きごたえのある演奏会でした。
(A・H)