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2011年5月31日(火) 19:00〜
揚原祥子ピアノリサイタル 開催レポート
主催:日本ショパン協会
共催:カワイ音楽振興会
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 今年も行われたショパン・フェスティバルの第2日の夜、揚原祥子さんのピアノリサイタルがありました。テーマを「ショパンとリスト」とし、二人の作曲家の対照性を取り上げたプログラムでした。5月末には珍しく肌寒い日でしたが、パウゼにはたくさんの方が見え、演奏を楽しみにしている様子でした。

 前半はオール・ショパン・プログラム。バラードの第1番から始まりました。穏やかな出だしで始まったと思うと、次は内側からのうねりが描かれる、というように次から次へと曲想が変化する曲のなかで、変化に身を任せるようにして弾く姿が印象的でした。刻一刻と変化する人の感情をそのままに表現なさっていて心が共鳴しました。続けて〈雨だれ〉〈黒鍵〉では、短い中に意識の集中が感じられ、心地良い一瞬を感じさせてくれました。ノクターン変ニ長調と舟歌嬰ヘ長調はどちらも同じ左手の音型に物憂い旋律が歌われる曲で、奏者の世界観の中で繊細にしかし大胆に演奏されました。曲間のトークで、揚原さんはショパンに対して謙虚なご様子でしたが、間の詰め方や音色の選択など、独特のアプローチで迫っていて、好ましい感じを受けました。

 後半は、ショパンとは異なる光を放つ存在としてリストの作品4曲が組まれています。まずは〈愛の夢〉第3番でリストの甘い世界への導入となりました。バラード第2番では素晴らしい技術に加えて何とも言えない詩的な感情を巧みに表現していて、その音楽観に会場全体が圧倒されていました。《巡礼の年第3年》より〈エステ荘の糸杉II〉〈エステ荘の噴水〉では、本当にロマンチックな音色がたくさん飛び出してきて魅惑的な演奏でした。特に左手から紡ぎだされるハープを模した音型は、ハープの音色そのものだったと誰もが感じたと思います。吐息から流れでる音楽の大きな流れも、聴いていて虜になりそうでした。

 アンコールにはショパンを3曲も演奏して下さり、一晩で多くの曲を楽しむことができました。連日様々な視点からショパンのピアノ曲を聴くことが出来る注目のイベント、ショパン・フェスティバル。明日も楽しみです。                

  (T.)

 


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