ショパン・フェスティバル2日目を迎える本日は、東京藝術大学を卒業後ドイツ
ベルリン大学でディプロムを取得され、同大学院修了後、ドイツ国家演奏家資格を取得された若手ピアニスト中根浩晶さんによるランチタイムコンサートが開催されました。プログラムは、「パリ社交界と若きショパン、その音楽に秘められた情熱と憂いのエモーション」をテーマに、ショパンがパリで華々しく活躍していた21歳から25歳の頃に作曲された作品を中心に構成され、中根さんのお話を交えながら進められました。
最初に演奏されたのは、ショパンがポーランドから亡命した後、5年ぶりにチェコで彼の両親と再会した喜びが反映されている≪ワルツ
変イ長調
Op.34−1「華麗なる円舞曲」≫です。明るく艶やかな音色で、喜ばしい気持ちが伝わってくるような、軽快な演奏をきかせてくださいました。
続いて、≪4つのマズルカOp.24≫です。ショパンは生涯にわたり50曲以上もマズルカを作曲しており、いずれも遠く離れた祖国への熱い想いが込められています。中根さんの演奏は、マズルカの特有のリズムや民族的な響きの中に、哀愁を帯び憂いが感じられる奥深いものでした。
次は、ショパンの友人リストの編曲作品、シューマン=リスト≪献呈≫です。この作品は、シューマンがクララとの結婚前夜、彼女に捧げた歌曲≪ミルテの花≫の第1曲を、当時ピアニストとして活躍していたリストがピアノ独奏用に編曲したものです。華麗な伴奏に合わせ、甘く伸びやかな旋律を優しく語りかけるように演奏され、ロマンティックな雰囲気に浸ることができました。
ここから再びショパンの作品に戻り、≪バラード第1番
ト短調
Op.23≫が演奏されました。ショパンがパリへ逃れた時期、そこには多くのポーランドの指導者や芸術家たちが亡命していました。その中の一人であるポーランドの詩人ミツキェヴィチの詩に共感してこの作品が作曲されたとのことです。細部にまでコントロールの行き届いた丁寧な演奏でしたが、その中にショパンのポーランド独立への強い思いや激しい感情などからなる壮絶なドラマがひしひしと感じられました。
最後は、≪アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ
変ホ長調
Op.22≫です。この作品は、1931年に完成した大ポロネーズに、その後アンダンテ・スピアナートの序奏加え、1935年、パリでショパン自身の演奏により初演されています。アンダンテ・スピアナートの部分では、小川のせせらぎを思わせるような、ゆったりとした伴奏に合わせ、清らかで透明感のあるメロディを伸びやかに演奏され、続く大ポロネーズの部分では、華やかで豪快な演奏を聴かせて下さいました。
盛大な拍手に応え、アンコールにリスト≪愛の夢
第3番≫を演奏して下さり、コンサートを締めくくられました。
非常に凝ったプログラムと、素敵な演奏を聴かせて下さった中根さんのコンサートは、ショパンがこれらの作品を作曲した当時のパリで過ごした日々が目に浮かんでくるようで、大変興味深いものでした。
(K.S)