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2011年6月4日(土) 17:00〜
須田眞美子ピアノリサイタル 開催レポート
主催:日本ショパン協会
共催:カワイ音楽振興会
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

  ショパン・フェスティバル最終公演は、桐朋学園大学で後進の指導にあたられる傍ら、国内外で幅広くご活躍されている須田眞美子さんのリサイタルが開催されました。この日は、チケットが前売りの段階で既に完売してしまうほど、非常にたくさんのお客様がいらしており、須田さんへの期待の高さが伺われました。

 今回のプログラムは、「ショパンが半生を過ごしたフランスで3人の偉大な作曲家たちが生み出した名曲の数々―その光と影を追う」をテーマに、前半がモーツァルトとドビュッシー、後半がショパンの作品で構成されていました。

 最初に演奏されたのは、モーツァルト≪「ああ、ママに言うわ」による12の変奏曲 ハ長調K.265≫です。日本でも<きらきら星変奏曲>でお馴染みのこの作品は、当時パリで流行したフランスの恋の歌の旋律をもとに作曲されています。くっきりと粒立ちの良い音色で各変奏の持ち味が表情豊かに表現され、純粋で愛らしい演奏を聴かせて下さいました。

 次は、同じくモーツァルトの作品で、パリ旅行中に母親を失った悲しみが反映されている≪ソナタ第8番 イ短調K.310≫です。モーツァルトらしい軽やかで洗

練された曲想の中に荒れ狂うような激しい悲しみが感じられる演奏で、とりわけ、第2楽章での息が長く穏やかな演奏は、天上的な美しさを湛えているようで印象的でした。

 前半最後はドビュッシー≪ピアノのために≫を演奏されました。この作品は<プレリュード>、<サラバンド>、<トッカータ>の3曲から成り古典組曲の様式で作曲されています。須田さんの演奏は、ピアニスティックな華やかさの中に、近代和声独特の美しい響きが存分に味わえただけでなく、音楽の持つ方向性がしっかりと感じられた興味深いものでした。

 休憩を挟み後半は、ショパンの作品です。最初の≪バラード第1番ト短調Op.23≫では、物語性に溢れ、終始緊迫した壮絶な演奏を聴かせて下さいました。

 続いては、≪ワルツ≫より、<第7番 嬰ハ短調Op.64−2>、<第9番 変イ長調Op.69-1「告別」>、<第2番 変イ長調Op.34-1「華麗なる円舞曲」>の3曲を演奏されました。いずれも、ショパンのワルツにおける独特のリズム感や絶妙な間の取り方、音楽が呼吸しているような自然な歌わせ方で、それぞれの性格が巧みに描写されていました。

 最後は、晩年の傑作≪バラード第4番 ヘ短調Op.52≫です。メロディがたっぷりと豊かに歌われ、ショパンの内面に潜む憂いの感情と、作品の持つドラマや抒情性が上手く調和し奥深い世界が醸し出されていました。

 盛大な拍手に応えアンコールに、リサイタルのテーマ「光と影」にちなみドビュッシー≪月の光≫と、ショパンの最晩年に作曲された≪マズルカ 嬰ハ短調Op.63-3≫がしっとりと味わい深く演奏され締めくくられました。

 モーツァルト、ショパン、ドビュッシー、時代の異なる三人の作曲家が同じフランスという地で生み出した作品の数々が堪能できたリサイタル、それぞれ三人三様の違いが楽しめ、充実したひとときでした。

 (K.S.)

  


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