ショパン・フェスティバル4日目の夜は、森知英さんのリサイタルを開催されました。本日のテーマは、『ショパンへ繋がる響き、そして発展する響き』です。プログラムは、ショパンの名曲を中心に、彼が影響を受けた作曲家の一人であるモーツァルトの作品、そして20世紀を代表する名ピアノストであるコルトーとゴドフスキーによる編曲作品で構成されていました。
初夏にぴったりな淡い水色のドレスで登場された森さんが最初に演奏されたのは、モーツァルト≪デュポールの主題による9つの変奏曲
ニ長調≫K.573です。古楽器をの演奏を思わせるような、繊細なタッチとペダリングで、ころころと軽やかな演奏を聴かせてくださいました。
ここからショパンの登場です。≪エチュード
変イ長調≫Op.25-1「エオリアン・ハープ」と≪バラード3番≫Op.47では、瑞々しく、音楽が絶えず前進して行くエネルギーが感じられるような演奏をされ、一方、≪ノクターン
嬰ハ短調≫「レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ」では、しっとりと歌い上げるような演奏を聴かせてくださいました。 そして、前半最後は≪アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ
変ホ長調≫Op.22です。微細なニュアンスまで丁寧に表現された和声と装飾的なパッセージはたいへん美しく、清らかで水面に光が反射しているような演奏でした。
後半最初は、コルトーとゴドフスキーによる編曲作品です。コルトー編曲≪チェロソナタ
ト短調≫Op.65より「ラルゴ」では、チェロが伸びやかに歌い上げる旋律とピアノとのの対話が聴こえてくるような色彩豊な演奏でした。ゴドフスキー編曲≪小犬のワルツ≫では、華やかな洒落た曲想になり、一味違う小犬のワルツを楽しめました。
再びショパンに戻り、≪子守歌
変ニ長調≫Op.57、≪幻想即興曲 嬰ハ短調≫Op.66、≪ワルツ
嬰ハ短調≫Op.64-2が続けて演奏されました。いずれの作品も、パッセージの宝石をちりばめたような美しさと絶妙なルバートによる表現は見事でした。
最後は、大曲が2曲並びます。≪バラード第1番
ト短調≫Op.23では、深い溜め息を思わせるような曲想が全体を貫き、物語を語って行くように丁寧に表現されていました。続く、≪ポロネーズ
変イ長調≫Op.53「英雄」では、騎士団の行進が聴き手に迫ってくるような、勇ましい演奏を披露され、客席から盛大な拍手が送られました。
アンコールは、リスト≪愛の夢第3番≫を演奏して下さり、盛りだくさんのプログラムと素敵な演奏で、充実したリサイタルとなりました。
(K.S)