ショパン・フェスティバルの季節がやって参りました。今年のテーマは、『ショパンのこころ』。本日から一週間に渡り、多種多様なコンサートが開催されます。
初日のランチタイムコンサートにご出演されたのは石田啓明さんで、『ショパン〜内に秘めた情熱〜』というテーマで迎えてくださいました。石田さんは今月、最愛のお母様を亡くされたばかりとのことで、ショパンの作品からは「鎮魂」の意味も含むコラールが登場する3曲≪ノクターン
ハ短調≫Op.48-1、≪スケルツォ第3番
嬰ハ短調≫Op.39、≪即興曲第3番
変ト長調≫Op.51と、リストの≪詩的で宗教的な調べ≫より第7曲<葬送>を演奏されました。
ショパンの作品では、各曲とも歌のように自然な息づかいで表現されておりました。和声の美しさや音楽の気高さをたたえつつも、内面に込められた激しい情熱がひしひしと伝わるようでした。リストの<葬送>では、鐘が鳴り響いているような立体的な響きや、ダイナミックかつ深い祈りに包まれたような演奏は強く心に残りました。
客席から盛大な拍手を受け、石田さんはご挨拶をされた後、アンコールにお母様が好んでおられたシューマン≪アラベスク≫Op.18を演奏され、コンサートを締めくくられました。
大変なショックにも負けず、素晴らしい演奏を披露してくださった石田さんの姿勢から大きな勇気をいただきました。以前、筆者は石田さんの演奏を聴いたことがあり、知的で作品の意図をしっかりと表現された演奏は強く印象に残っておりましたが、今回は、より音楽的に深みを増していたように思いました。今後、ピアニストとしてさらに羽ばたいて行かれることを期待しております。
(K.S)