今年も6日間にわたって開催されている、ショパン・フェスティバルin
表参道。コンサートサロン「パウゼ」は、連日大勢のお客様で賑わっています。30日のお昼には、この春、東京芸術大学大学院を修了されたばかりの若手ピアニスト、梅村知世さんのランチタイム・コンサートが開催されました。ワルツ、マズルカ、ポロネーズといった舞曲を中心に構成されたプログラムは、作品の配列なども含めてとてもよく考え抜かれたもので、小一時間という短い時間ながらも、ショパンの音楽の様々な側面を楽しむことができました。
この梅雨の季節にぴったりの、美しい「紫陽花色」のドレスで登場された梅村さん。鮮やかなタッチで奏でられる《ワルツ
変ホ長調 op.18
「華麗なる大円舞曲」》でコンサートは幕を開けます。梅村さんからのご挨拶と本日のプログラムの解説を経て、《4つのマズルカ op.17》より第1番変ロ長調、第4番イ短調、《バラード
第2番 ヘ長調
op.38》の三曲が連続して演奏されました。「舞曲」シリーズの中に1曲だけ入ったバラードは、ポーランドの詩人ミツキエヴィチの詩に霊感を受けて作曲されたとも言われるドラマティックな作品です。4曲あるバラードの中でも、第2番は比較的取り上げられる機会が少ない作品ですが、イ短調のマズルカのあとに続く曲として、梅村さんの心に自然と浮かんできたものだそう。実際、マズルカの最後の和音の余韻から生まれ出るようにそっと弾き始められたバラードの出だしは、さりげなくも印象的なものでした。
後半の2曲はポロネーズです。有名な《ポロネーズ
変イ長調
op.53「英雄」》ではエネルギーの噴出するような勇壮・大胆なパフォーマンスで会場を圧倒。対照的な晩年の傑作《ポロネーズ
変イ長調
op.61「幻想ポロネーズ」》では、深い精神性を湛えた音楽に真摯に向き合うような、心のこもったピアノを聴かせてくださいました。ブラボーの声と温かい拍手を受け、ラストはシューマン=リスト《献呈》とショパンの《子犬のワルツ》(アンコール曲)で、幸福感たっぷりにしめくくられました。
現在はベルリンに留学され、新たな地でさらなる研鑽を積まれているという梅村さん。アーティストとして、今後ますます大きく羽ばたいていかれることを期待させる、素敵な演奏会でした。
(N. J.)