ショパン・フェスティバル in
表参道2013も、いよいよ終盤。5日目の夜は、国立音楽大学教授・三木香代さんのピアノリサイタルが開かれました。ショパン国際ピアノコンクール最優秀演奏賞や日本ショパン協会賞等の受賞、《バラード》等のCD録音をはじめ、ショパン作品の演奏ではとりわけ定評のある三木さんだけに、チケットは早々に完売。「心で語るショパン 心で聴くショパン」をテーマに、今夜も味わい深い円熟の演奏を聴かせてくださいました。
初めは、しっとりとした《前奏曲 嬰ハ短調
op.
45》から。ショパンの繊細な心模様を映し出すように、刻々と移りゆくハーモニーが濃淡のある艶やかな音で奏でられます。ロマンティックな《ノクターン
変ニ長調 op. 27-2》に続いて演奏された《ソナタ 第2番
変ロ短調 op.
35》では、三木さんのいっそう情熱的な側面が押し出され、会場の白熱した空気が感じられました。
コンサートの後半は、晩年のショパンならではの天国的な美しさに満ちた《舟歌
嬰ヘ長調 op.
60》で始まります。まろやかな響きの綾をなす《即興曲 第3番
変ト長調 op.
51》は、直前に取り上げられた舟歌の異名同音調。プログラムを見渡してみると、全体を通じて作品の配列に調性面でのさりげない配慮がなされていることがうかがえました。《バラード
第3番 変イ長調 op.
47》と2つのマズルカを経て、最後におかれた《スケルツォ 第3番
嬰ハ短調 op.
39》では、高音部のパッセージの迸るようなきらめきが印象的。いずれも、ほどよく抑制のきいた表現の中に洗練された品格を感じさせる、完成度の高い演奏でした。
アンコールには有名な遺作のノクターンが演奏され、素晴らしいショパンの夕べを名残惜しむように、いつまでも盛大な拍手が鳴り響いていました。
(N.J.)