6月2日から6月7日にかけてパウゼにて開催されているショパンフィスティバル2014。本日のランチタイムコンサートではピアニスト古賀大路さんが素晴らしい演奏を披露してくださいました。天候は生憎の雨でしたが、それでも会場には幅広い年齢層の多くのお客様が集われ、ほぼ満席でした。
まず何と言っても忘れられないのは、ショパンのバラード第2番ヘ長調op.38による繊細かつドラマティックな幕開け。遠くから聴こえてくるような冒頭のパストラーレの粒のそろったタッチ、縦にしっかり芯の通ったハーモニー。そして、突如吹き荒れる嵐のごときパッセージの明快かつ迫力ある表現。古賀さんならではの高いテクニックと集中力を以てしなければ実現できないと思われる演奏で、物語性と共に構成感も抜群でした。
バラードにおいて発揮された古賀さんの表現のコントラストは、12の練習曲
op.10より 第1番 ハ長調、第3番 ホ長調 「別れの曲」、第5番
変ト長調
「黒鍵」の演奏においてはより個別的に立体的に聴くことができました。とりわけ第1番のダイナミックな表現から、一転して「別れの曲」の抒情的でしなやかな表現に切り替わるところは見事な集中力でした。
即興曲 第2番 嬰ヘ長調
op.36においては非常に緻密に弾き分けられた響きの妙と共に風通しの良いサロン的雰囲気も爽やかに会場を駆け抜けていきました。この点は、続くマズルカ
嬰ハ短調 op.50-3やワルツ ヘ長調
op.34-3「華麗なる円舞曲」といった舞曲においても巧みに表現されていましたが、とりわけワルツの古賀さんならではのリズムの感じ方はとても軽快かつ新鮮に感じられました。
ポロネーズ 第3番 イ長調
op.40-1「軍隊」は堂々たる美しい演奏。とても響きが整った三和音の連打が美しく、「見せ場」の創り方も非常に巧みで、ピアノの様々な響きが織りなす色彩感豊かな表現に圧巻でした。
「〆」のスケルツォ 第1番 ロ短調
op.20は、ダイナミックな表現と共に非常に繊細かつナイーヴな古賀さんの一面も垣間見ることができ、好演でした。また、演奏を終えた後での会場のお客様への古賀さんのご挨拶もとてもフレッシュな印象で、高いテクニックや表現力、構成力だけではなく、その純朴な人柄にもとても好感が持てました。割れんばかりの拍手に応えてのアンコールは華麗なる大円舞曲op.18。
古賀さんの「ショパンを弾く喜び」がストレートに伝わってくる素晴らしい演奏でした。
(G.T.)