6日間にわたった「ショパン・フェスティバル2014 in
表参道」もついにクライマックス。最終日のイブニングコンサートは、ピアニストとして、室内楽奏者として第一線で活躍し続け、指揮者としての活動の幅も広げている迫 昭嘉さんのリサイタルです。
迫さんといえば、その幅広いレパートリーの中でも、特にベートーヴェンやイタリアものなどがお馴染みですが、今宵はどのようなショパンを聴かせてくださるのでしょうか。リサイタルのテーマは、「こころの繋がり」。前半はあえてショパン以外の作曲家の楽曲を配置し、後半でショパンだけの世界を浮き彫りにするという、新たな想像をかき立てるプログラムとなっていました。
冒頭はシューベルトの「ソナタ第13番・イ長調」。柔らかなトーンで始まった第1楽章は、優しさ、素直さに満ちていました。澄んだ心の第2楽章、愛らしく可憐な第3楽章。肩の力の抜けた心地よい演奏に、心が安らぎます。
続いて、シューマンの「ソナタ第2番・ト短調」。素速いパッセージが風のように疾走する、シリアスな第1楽章。私的な独白、穏やかな中に揺れ動く心模様を感じる第2楽章。再びシリアスな第3楽章は驚くくらい急速な速さ。第4楽章はさらに畳み掛けるような展開で、劇的なエネルギーが一気に放出されるようなイメージを感じました。
プログラム後半は、ショパンです。まずはとても珍しい曲、「ベルリーニの歌劇『清教徒』の行進曲による変奏曲より第6変奏『ヘクサメロン』」。リスト、タールベルク、ピクシス、ヘルツ、チェルニーとの合作による変奏曲で、ショパンが担当したのがこの第6変奏であるとのことです。ショパンらしい美しい色合いの変奏に仕上がっていました。
そして、ついに最後の曲。至高の大作、「ソナタ第3番・ロ短調」。重厚で堂々たる第1楽章は出だしから緊張感に満ち、繊細でロマンティックな旋律は、これ以上ないと思えるほどの美しさでした。第2楽章は即興的な軽やかなパッセージと、深い思いを秘めた幻想的なメロディーとの対比が見事。第3楽章はゆったりとしたテンポで、静かに穏やかに、心に染み入ります。そしてラスト、迫力の第4楽章は、最上級の華やかさ。ピアノという楽器の魅力が最大限に引き出される瞬間が、ここにあるのではないでしょうか。
アンコールは、軽やかで優美な「ワルツ・ヘ長調Op.34-3」、そして迫さんお馴染みの曲、レスピーギの「イタリアーナ」でほっとひと息。満席の会場からは幾度も大きな拍手が送られ、今年の「ショパン・フェスティバル」も大きな盛り上がりの中、幕を閉じました。
(H.A.)