日本ショパン協会による恒例のイベント「ショパン・フェスティバル」が今年も幕開けとなりました。その最初のコンサートを務めましたのが、本日のランチタイムコンサートのソリストである阪田知樹さん。現在ハノーファーで研鑽を積んでいらっしゃる新進気鋭のピアニストです。今日は「ショパンに見るスラヴ的郷愁と情熱」というサブタイトルのもと、ショパンと並行してチャイコフスキーやラフマニノフの楽曲もご紹介くださいました。
阪田さんの演奏は、過剰な表現やペダリングを抑えた明快な音色がとても印象的でした。いずれのプログラムにも確固とした演奏技術の高さを感じましたが、とりわけ冒頭のショパン作曲《幻想即興曲》やチャイコフスキー作曲《主題と変奏》では、その明快な音色から立ち上がって来る音楽の息遣いが感じられました。また、《3つのマズルカ》では楽曲に込められたリズム感を大切にした演奏で、客席をうならせていました。また、終盤の《ワルツ第5番》《英雄ポロネーズ》といった華やかなプログラムでは、優雅さと力強さに溢れた演奏で客席を惹きこみ、盛大な拍手を呼んでいらっしゃいました。
アンコールはショパンの練習曲の中でも特に難しいと言われる作品10‐2でしたが、阪田さんはサラリと弾きこなし、お客様の中には感嘆の声をあげる方もいらっしゃいました。阪田さんの素晴らしい演奏で鮮やかな幕開けとなったショパン・フェスティバル。続く方々の演奏も大変楽しみです。
(A. T.)