毎年ショパンの作品で満たされる1週間『ショパン・フェスティバル
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表参道』。その初日のイブニングコンサートに、東誠三さんが登場しました。1997年のリサイタルでのショパン《24の前奏曲》の演奏が高い評価を受け、同年に日本ショパン協会賞を受賞しています。
“オール・ショパン”で固められたプログラムから、リサイタルの副題「歌〜ショパンが旋律に込めた想い」と付けられた理由が浮かんでくるようです。
前半は《2つのノクターン作品62》と、《ソナタ第2番》。後半は〈子守唄作品57〉でやわらかく始まり、《3つのマズルカ作品59》、そして3つの大作のうちに数えられている〈舟歌〉、〈幻想ポロネーズ〉。プログラムに並んだ作品は、ショパンがジョルジュ・サンドに出会った翌年の1837年から、破局を迎える前年の1846年までの間に書かれたものです。ふたりがともに過ごした10年弱のこの期間、ショパンはサンドに支えられることでますます作曲活動も充実し、傑作を生み出していきます。
東さんのショパンは音量のある部分でも決して硬いものではなく、自然な響きを持ちます。また弱音部分は儚(はかな)げでときに甘く、ピアニッシモの美しさが生かされた繊細な演奏です。どの場面においても“歌”を忘れず、詩的に歌が紡がれ、ショパンに対する思いが優しく伝わってくるようでした。
この日は久しぶりにショパンの作品をまとめて演奏する機会とあり、うれしかったという東さん。本編の演奏終了後には来場者に謝辞を述べ、「ここにいらっしゃる皆さんと同じく、“ショパン命”なんです!」の一言で会場は沸きました。アンコールももちろんショパンの作品から。「現在凝っていて、かなり好き」というノクターンの中から、作品27-2を聴かせてくださいました。
(R.K.)