ショパン・フェスティバル2日目のランチタイムコンサートは、現在、東京藝術大学音楽学部1年在学中の桑原志織さんの登場です。プログラムはオール・ショパンで、「ショパン〜出逢いと別れの中で〜」と題して行われました。このタイトルは、昨年読んで感激したという平野啓一郎氏の小説「葬送」(ショパン、ドラクロワ、ジョルジュ・サンドを主人公にした長編小説)にインスピレーションを得て付けたそうです。
桑原さんはこれまでに第83回日本音楽コンクール第2位、岩谷賞(聴衆賞)、第9回ルーマニア国際音楽コンクール第1位、オーディエンス賞をはじめ、数々のコンクールでの受賞歴があり、コンサート活動もしていらっしゃいます。
この日最初に演奏したのは、Op.33の4つのマズルカでした。しっとりと弾いた1曲目、それとは変わって2曲目では若いエネルギーが迸るような勢いのある演奏で、3曲目、4曲目でも、若さを前面に出したようなショパンを聴かせてくれました。
次の舟歌 嬰ヘ長調
Op.60では、他の舟歌のような8分の6拍子ではなく、8分の12拍子で書かれているこの曲に、ゴンドラが波間に揺れてたゆとうような感覚になるところがあって、心地よく聴くことができました。
ノクターン ロ長調
Op.9-3では、ランチタイムながら、夜の帳が降りた静けさを感じさせるようなしっとりとした演奏でした。
最後はバラード第4番 ヘ短調
Op.52です。ショパンの最高傑作の一つと言われるこの名曲で、若者らしいメリハリのはっきりした好演を聴かせてくれました。
会場の温かい拍手に応えてのアンコールでは、コンサートのタイトルに因んで「別れの曲」を演奏しましたが、これもとても素晴らしい演奏でした。これからが本当に楽しみなピアニストです。
(K.Y.)