本日は、若手ピアニスト野上真梨子さんをお迎えして、ショパンの舞曲に焦点をあてたコンサートが開催されました。野上さんは現在、桐朋学園の大学院に在学中ですが、既に数多くのコンクールで入賞を果たしている、今後のご活躍が大変楽しみなピアニストです。
ショパンの舞曲を弾きこなすには、ワルツやマズルカのリズムを身体に取り込むセンスに加え、技巧的なパッセージも軽やかに弾きこなせる技術が求められます。これは特に3拍子の曲に触れる機会の少ない日本人にはとても難しいことですが、野上さんは安定した技術と華やかな音色で、いずれの曲もお洒落な雰囲気にまとめていらっしゃいました。特に2つの〈華麗な円舞曲〉と題されたワルツと〈小犬のワルツ〉では、その艶やかな弾きぶりに、会場から大きな拍手があがっていました。
また、今回はショパンの舞曲と他の作曲家の舞曲を比較するということも演奏会のテーマとなっており、ショパンに大きく影響を受けたと言われるスクリャービンのワルツと、ショパンと同郷であるポーランドの作曲家シマノフスキのマズルカが披露されました。特にシマノフスキは日本ではあまり知られていない作曲家ですが、野上さんの大変美しい演奏に息を吞んでいらっしゃるお客様も多く見られました。
最後はショパンの舞曲の中でもとりわけ華やかな《英雄ポロネーズ》が演奏されました。音の厚みや力強さ、そしてショパンらしい繊細さが必要な楽曲ですが、野上さんは持前の音色の華やかさと細やかな音楽創りで、見事に仕上げていらっしゃいました。アンコールはもちろんショパンですが、なかなか聴く機会の少ない《タランテラ》を選んでいらっしゃいました。始めから終わりまで舞曲尽くしの、大変楽しい時間でした。
(A. T.)