『ショパン・フェスティバル』4日目の夜は、青柳いづみこさんと高橋多佳子さんによるレクチャー・コンサートが開催されました。10月に始まるショパンコンクールの予備審査の話題に加え、高橋さんが5位に入賞した際の思い出を、当時演奏した作品と共にたどる内容です。
先月行われた予備審査を現地で聴いた青柳さん。エチュードは内声を出して別の旋律を作ること、ペダリング、タッチの種類、フレージングに即した表現が求められ、ノクターンやマズルカでは、音楽的な成熟度がポイントとなったそうです。“物理的な技術”ではなく“表現のための技術、表現のためのコンクール”という言葉が印象に残ります。
高橋さんによる演奏プログラムは〈ノクターン第18番〉〈スケルツォ第4番〉〈華麗なる円舞曲〉《4つのマズルカ作品24》《ソナタ第3番》より第4楽章の5曲。当時師事していたエキエル先生のショパンは“男性的”と振り返ります。
「太いラインが続く中、繊細で細かいニュアンスが詰まった演奏でした。自由に、メロディーを太い線で続けるよう教わったものです」
コンクール経験者ならではのアドバイスもなされました。ピアノ選びの体験談では、他の参加者の試弾を聴き、可能であれば自分の試弾を誰かに聴いてもらうことをポイントとして挙げました。ご自身は「どんなタッチでも反応してくれる」カワイのピアノを選択。楽器との出会いでコンクール期間中も新たな表現が生まれ、結果に繋がりました。
終盤、ふたりは“良い音”について思考を巡らせます。まずは「良い音を出そう」という気持ちを持つこと、多くの演奏会へ行き本物の音楽に触れること、センスを磨くこと、作曲家の使った言語を学ぶこと……。多くの来場者にとって、演奏のヒントとなったのではないでしょうか。
アンコールは、青柳さんと高橋さんによる連弾。ドビュッシーの《小組曲》より〈小舟にて〉でした。
(R.K.)