ショパン・フェスティバル5日目のランチタイム・コンサートは、現在、イタリアのイモラ音楽院へ留学中で、日本とイタリアを行き来して演奏活動を行っているピアニストの米津真浩さんの登場です。
彼はショパンの他に、ポーランドの作曲家・ピアニストのゴドフスキーと、ベルギーのピアニストのドゥーセの、ショパンの曲を題材にした作品を演奏しました。
1曲目は、ワルツ 変ホ長調
Op.18「華麗なる大円舞曲」。間の取り方がとても素晴らしく、テンポもこれ以上少揺らすと嫌らしくなるという手前で抑える絶妙な揺らし方で、非常に面白い演奏でした。
2曲目の12の練習曲 Op.25より第5番
ホ短調と、それを基にしてゴドフスキーが魅力的に編曲した《ショパンの練習曲に基づく53の練習曲より第34番「マズルカ」》を、ほとんど切れ目が分からないくらいに続けて演奏しました。ゴドフスキーの曲はショパン以上に至難の曲ですが、見事なテクニックで楽しませてくれました。
4曲目はショパンのワルツ 変ニ長調
Op.64-1「小犬」で、5曲目(と言っていいのでしょうか?)はショパン=ゴドフスキーのワルツ「小犬」(ショパンの「小犬のワルツ」のパラフレーズです)でしたが、ショパンの「小犬のワルツ」の繰り返しの部分からあまりに自然にゴドフスキーの「小犬」に移行していったので、演奏が終わっても、初めからあたかも1曲のような感じで、何が行われたのか瞬時には理解できないほどでした。
続いてショパンのポロネーズ イ長調
Op.40-1「軍隊」、ワルツ 嬰ハ短調 Op.64-2、即興曲第4番
嬰ハ短調
Op.66「幻想即興曲」の3曲があまり間を置かずに続けて演奏されました。「軍隊」では勇壮に、ワルツでは勇壮から静への対照の妙を、「幻想即興曲」では優しくしっとりした音楽を聴かせてくれました。
この3曲をあまり間を置かずに演奏したわけが、次の曲、ドゥーセの「ショピナータ」を聴いて分かりました。ドゥーセはクラシックのピアニストでしたが、ジャズ文化に感化されて多くのジャズ・アレンジ作品を残したそうです。この「ショピナータ」は、直前に演奏した3曲をミックスし、ラグタイム風にアレンジを加えたもので、実に楽しい作品であり演奏でした。
最後はショパンのバラード第4番 ヘ短調
Op.52を、非常に個性豊かに見事に演奏しました。
平日の昼間にも関わらず補助席も埋まるほど詰めかけた聴衆から大喝采を浴び、アンコールに「熊蜂の飛行」を非常に速いテンポで演奏して、また大きな拍手を受けていました。終了後も聴衆の興奮はなかなか冷めないようでした。
コンサート全体の構成力があり、テクニックも表現力もあり、個性豊かな魅せるピアニストと言えるでしょう。ランチタイムという短時間ではなく、普通のコンサートで是非聴いてみたいピアニストです。
(K.Y.)