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松本和将ピアノリサイタル 開催レポート
ショパンエチュード全曲演奏会
2015年5月29日(金) 19:00開演(18:30開場)
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ」

  

 連日多くのお客様で賑わいを見せているショパン・フェスティバル。5日目の夜の公演は、ピアニスト松本和将さんのショパン・エチュード全曲演奏会が開催されました。松本さんは、2年前にパウゼにてショパン・エチュードの公開講座を担当されており、その時のことを懐かしく思いながら、興味深く聴かせていただきました。演奏会は、松本さんのお話を交えながら終始和やかに進行されました。

 ショパン・エチュードに先立ち、前半はスクリャービンの作品を演奏してくださいました。最初は、ショパンの影響を受けている初期の作品からエチュードを3曲(嬰ハ短調Op.2-1、変イ長調Op.8-8、嬰ヘ短調Op.8-2)です。旋律を滑らかに歌わせたロマンティックな演奏は大変美しかったです。

 続いて、神秘主義的な作風に変化した作品として、ソナタを2曲披露されました。《ソナタ第5番》Op.53では、多彩な音色と響きに包まれるようなスケールの大きな演奏を、《ソナタ第9番 黒ミサ》Op.68では、廃墟の教会で繰り広げられる不気味な儀式を鮮明に描写され、ピアノ演奏付きの無声映画を鑑賞しているような迫力のある演奏を展開されました。

 休憩を挟み後半は、いよいよショパン・エチュードの全曲演奏です。Op.10、Op.25共に、ひとつの物語として作品を解釈されていたことと、旋律のもつ声楽的な流れの美しさや和声の表情を繊細に表現されていたことが、とりわけ印象に残りました。松本さんは、ショパン・エチュードの持つ技術的、音楽的な難しさゆえに大変なご苦労をされたとのことですが、非常に完成度の高い演奏を披露してくださいました。なにより、この曲集に対する松本さんの深い愛情が伝わり、聴いていて熱いものを感じました。見事な演奏をされた松本さんに、客席から鳴り止まないほどの拍手が贈られました。

 常に物語性を持って演奏することを大切にされているという松本さん。どんなに難解な曲であっても聴き手との距離を一気に縮めてくださる魅力を感じられた、素晴らしい演奏会でした。

(K.S)


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