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川村文雄 ピアノリサイタル 開催レポート
〜響き合うエチュード〜
2016年5月24日(火) 19:00開演(18:30開場)
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ」

  

 『ショパン・フェスティバル』2日目のイブニングコンサートは、川村文雄さんによる演奏会です。川村さんはショパン・フェスティバルの初年、2010年にも出演経験があります。

 ご自身でつけられた副題は“響き合うエチュード”。曲目はすべてショパンの作品で、《練習曲》の作品25と10からの7曲を主軸としたプログラムです。

 最初に演奏されたのは、《2つのノクターン》作品27。第7番は、幻想的で静かなはじまりに対し、中間部の劇的な展開との対比、そして時折長調へ移る場面が美しいものでした。第8番は第7番とは対照的で、澄んだ空のようなイメージです。装飾音が増えていくにつれ、音色もさらにきらびやかになっていきました。

 ここからはエチュードが7曲並びます。演奏順は作品番号で並べられたものではなく、〈エオリアンハープ〉〈別れの曲〉〈木枯らし〉など名曲の間に、作品10-7、25-5、10-6などが配置されたものでした。川村さんの意図的な曲の並べ方によって響きが生まれ、作品に対する印象も新たに感じられたのではないでしょうか。

 前半の最後は〈幻想曲〉です。静かな序奏に物々しい3連符、瞑想的な場面など、次々と現れては消えていくパッセージを、端正で情熱的に演奏されました。

 当夜の締めくくりには、《ソナタ第3番》が披露されました。決然としたはじまりの第一楽章、力強さのなかにも抒情性を感じさせます。なかでも第3楽章は印象に深く残るもので、演奏会終了後には会場のあちこちで「第3楽章はすばらしかった」という声が複数聞こえてきたほどです。内省的な音楽をていねいに柔らかく演奏し、ピアノの美しい音色を引き出していました。

 アンコールは、ノクターン〈遺作〉。暗く悲しげな雰囲気、その後の少し軽やかな曲想を経て、曲は儚げにとじます。切なく淑やかな余韻を残しました。

(R.K.)


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