ショパン・フェスティバル 2016 in
表参道の3日目のランチタイムコンサートは日本音楽コンクール、東京音楽コンクールで第1位に輝いた黒岩航紀さんが出演されました。コンサート前からチケットが完売となるほど非常に多くのお客様が、今回の演奏を楽しみにいらっしゃいました。
この日のプログラムは皆に愛されているショパンの曲の中でも、特にパッション溢れるドラマティックな曲を集めたもので、「ショパンの情熱に満ちた人生、名エチュードと名曲選」と黒岩さんは仰っていました。
颯爽と現れた黒岩さんは始めに「練習曲op.10」より第4番嬰ハ短調、第5番変ト長調「黒鍵」、第12番ハ短調「革命」を演奏されました。第4番のうねる音の渦巻く様子や、「黒鍵」の色彩的な和音、「革命」の怒涛のごとく流れる音の中にも繊細な音が見え隠れする様子に冒頭から圧倒されました。続く「練習曲op.25」からは詩情豊かに歌い上げる第1番変イ長調「エオリアンハープ」、切り裂くように舞い上がる第11番イ短調「木枯らし」、ダイナミックな分散和音で雄大な情景を描く第12番「大洋」を演奏されました。
続いて「3つのワルツop.64」をワルツの軽快なステップを思わせるタッチで弾かれ、客席も軽やかな空気に一変しました。
「ノクターン変ホ長調op.9-2」では旋律の美しさだけでなく、バスの低音や和音の移り変わりを生かしたすっきりした演奏でした。
プログラムの最後は「スケルツォ第3番嬰ハ短調op.39」を演奏されました。アクセントの効いた緊迫感に満ちたドラマティックな部分と包み込むような温かいコラールの部分の対比を楽しみました。
そして、アンコールではブラボーの声が上がるほどの白熱した「軍隊ポロネーズ」、ノクターンと同じ形式で書かれ、ショパンへの追悼曲であるリスト作曲「コンソレーション」、黒岩さんの代表曲でもあり、卓越した技術に驚くばかりの「ラ・カンパネラ」、鮮やかでありながらも充実した「バラード第1番」と4曲もサービスして下さいました。
1時間という短い間でしたが、黒岩さんの名人芸を思う存分楽しんだひと時でした。日本を代表するピアニストとして、今後さらに世界で活躍されることを願っております。
(H.M.)