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三浦謙司 ピアノリサイタル 開催レポート
〜ショパンとショパンから触発されたエチュードたち〜
2016年5月26日(木) 19:00開演(18:30開場)
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ」

 

 

 「ショパン・フェスティバル2016 in 表参道」4日目の夜は、三浦謙司さんのピアノリサイタルです。題して、〜ショパンとショパンから触発されたエチュードたち〜。プログラムの前半ではバラードを中心に置き、後半ではスケルツォを起点に今年のテーマである練習曲を3曲、そしてラストに、スクリャービン、ラフマニノフ、リストによる、ショパンから触発された練習曲の名作を配しました。ショパンの音楽が源となって、どのような練習曲が生み出されていったのか。興味深いプログラムです。

 三浦謙司さんはドイツ、ベルリンのハンス・アイスラー音楽大学に在学中の若きピアニスト。最近でいえば、2015年11月下旬から12月上旬にかけて開催された「第9回浜松国際ピアノコンクール」での奨励賞受賞は記憶に新しいところです。

 リサイタル前半、オール・ショパン。

 「バラード第1番 ト短調 Op.23」は、驚いたことに奏でられるすべての音が叙情的。まろやかな、優しい歌心を感じました。

 続く「3つのノクターン Op.9」でも、第一に感じるのは上質な音色。胸を焦がすような第1番、ノスタルジックな思いにしみじみとする第2番、装飾音が細やかなレースのように美しい第3番と、とにかく素晴らしかったです。

 前半のラストは「バラード第4番 へ短調 Op.52」。一瞬たりとも途絶えることのない歌心にのせて、情熱を込めて奏でられるバラード。クライマックスへと突き進む輝かしい音楽の高揚感に、心を奪われました。

 後半の第1曲目は「スケルツォ第2番 変ロ短調 Op.31」。どんなに音量がマックスであっても、音が上質なのに驚きました。

 そして続く「練習曲」は、「へ短調 Op.10-9」、「変イ長調 Op.10-10」「ホ短調 Op.25-5」いずれも、ショパンの練習曲が単なる技術の鍛錬だけではない、真の芸術作品であるということを証明する、アイディアに溢れた演奏でした。

 最後はショパンに触発され創作された、他の作曲家による練習曲です。スクリャービンの「3つの小品Op.2より第1番 練習曲 嬰ハ短調」の濃密な歌。息を呑んで聴きました。ラフマニノ フの「絵画的練習曲集Op.39より第5番 変ホ短調」の破滅的なロマンティシズム、巨大なスケール感。

 そして最後は、リストの「超絶技巧練習曲」より2曲です。第10番『アパッショナータ』での上質なテクニック、第4番『マゼッパ』の高貴な音楽。ただただ見事でした。

 アンコールはラフマニノフの「ヴォカリーズ」。止めどなく湧き出てくる三浦さんの瑞々しい音楽に、聴衆の拍手はいつまでも鳴り止みませんでした。

(H.A.)


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