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佐藤卓史 ピアノリサイタル 開催レポート
「エチュード」とサロン音楽の時代
2016年5月27日(金) 19:00開演(18:30開場)
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ」

 

 

 ショパン・フェスティバルも終盤に差し掛かった5月27日、ピアニスト佐藤卓史さんのリサイタルが開催されました。本日のプログラムのテーマは『「エチュード」とサロン音楽の時代』。ショパンの演奏活動の拠点となった19世紀パリのサロンに焦点を当て、前半に、ショパンと同時代の作曲家ならびに影響を受けた作曲家のサロン風エチュードを、後半に、サロンで親しまれたショパンの小品をご紹介されました。また、佐藤さんご自身によるプログラムノートには演奏曲目を中心に当時の背景などが詳しく解説されており、非常に興味深かったです。

 最初は、プラハ生まれのユダヤ人作曲家モシェレスによる教本《メトードのメトード》を取り上げてくださいました。この曲集は、モシェレスの自作曲に加え、当時の作曲家に委嘱して作曲されたエチュードが収録されており、その中から、モシェレス《練習曲イ長調「遊び心」》Op.98-1、ショパン《3つの新しい練習曲》、メンデルスゾーン《練習曲へ短調》WoO.1、ヘンゼルト《練習曲変ト長調「ゴンドラ」》Op13-2の4曲をご披露されました。それぞれの曲の性格が丁寧に表現された非常に親しみを感じる演奏を展開され、当時のサロンに居るような心地になりました。

 続いて、ブルクミュラー《18のジャンルの練習曲》Op.109より、第14曲「ゴンドラ漕ぎのルフラン」、第15曲「風の精」、第18曲「紡ぎ歌」を演奏。いずれも奥行きのある豊かな響きが印象的な演奏で、教育用に作曲されたエチュードとは思えないほどでした。

 前半最後は、フランスの女流作曲家シャミナードの《6つの演奏会用練習曲》Op.35より、第2曲「秋」、第5曲「即興曲」、第6曲「タランテラ」です。多彩な音色、和声の繊細な表情、気品があり深みのある表現が大変美しい演奏でした。

 後半は、ショパンの小品です。《即興曲第1番》Op.29の爽やかで輝きのある演奏で始まりました。続く、《バラード第3番変イ長調》Op.47と《子守歌変ニ長調》Op.57では、ゆったりとしたテンポ感が心地よく、宝石を散りばめたような音色が美しい演奏にうっとり。躍動感があり心が弾むような《タランテラ変イ長調》Op.43を経て、《3つのワルツ》Op.64では、ワルツのリズムと間の取り方が絶妙な上に、曲中に漂う洗練さと憂愁が巧みに表現されておりました。プログラム最後は《舟歌嬰ヘ長調》Op.60です。この曲の旋律や和声の美しさが細やかに表現されていたと同時に、ショパンの晩年の孤独感や悲しみなどが静かに感じられるような演奏は圧巻でした。

 客席からの盛大な拍手に応えられ、ご挨拶と共にアンコールとして、ショパン《ノクターン嬰ハ短調》遺作と、リスト《パガニーニ大練習曲集》より「ラ・カンパネラ」を演奏してくださり、温かな雰囲気に包まれた素晴らしいリサイタルとなりました。

(K.S)


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