ショパンをより深く理解しようと、毎年行われているコンサートシリーズ『ショパン・フェスティバル
in
表参道』。ひとりの偉大な作曲家に焦点を当てたこの企画は、今年で9回目を迎えました。テーマは“練習曲(2016年)”“ワルツ(2017年)”と続き、今回は“前奏曲(プレリュード)”。12名のピアニストがこのキーワードからショパンを捉え、多様なプログラムを披露していきます。
初日のイブニングコンサートは、ディーナ・ヨッフェさんによるリサイタルが開催されました。現在ハンブルク音楽大学で客員教授を務めるほか、多くの国際ピアノコンクールの審査員としても知られる名指導者です。
プログラムは、スクリャービンの《24の前奏曲Op.11》とショパンの《24の前奏曲Op.28》。作品に対し、ヨッフェさんご自身は「どんな時代にも当てはまる人間の感情や感覚を、それぞれの曲が表している」とコメントを寄せています。
この日は各作品を通しで演奏するのではなく、スクリャービンの第1番、続いてショパンの第1番というように、1曲ずつ交互に弾き進めていきました。スクリャービン作品はショパンのものにならい、同じ調性の並びで構築されているため、2作品を一本の道として辿って行く感覚です。先に演奏されるスクリャービンが、時にショパン作品の前奏のように感じ取れることもあり、新鮮な印象を与える興味深いプログラミング。作品中に描かれた光や香りなど、五感を刺激する要素と、24の調性とが結びついた演奏でした。
来日公演の最終日でもあったこの日のリサイタル。あたたかな笑顔で謝辞を述べ、「ここまでショパンを弾いてきましたが、最後はモーツァルトを」と言い、〈デュポールのメヌエットの主題による9つの変奏曲
K.573〉をアンコールに演奏されました。
(R.K.)
to
top > ディーナ・ヨッフェ
ピアノリサイタル