5月末、「ショパン・フェスティバル2018
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表参道」のイブニングコンサートに、阿見真依子さんが登場されました。「プレリュードとショパン〜受け継がれていくもの〜」と題された今回の演奏会では、ショパンを含む様々な作曲家の前奏曲を中心とした多彩なプログラムが披露されました。
演奏会の前半では、バッハに始まり、ショパン、スクリャービン、メンデルスゾーン、ドビュッシーと異なる時代を生きた複数の作曲家のプレリュードを聴き比べることができ、単一の作曲家のプレリュード全曲演奏とはまた違った趣向を楽しむことができました。各曲の調性関係も考慮したプログラム構成となっており、特に1曲目のバッハから2曲目のショパンへのつながりが自然で美しかったです。また、一連の前奏曲のあとに取り上げられたショパンの《舟歌嬰へ長調》op.
60も印象的でした。幻想的に移り変わっていく和声とたゆたうようなリズムの上で旋律が情感豊かに歌われており、とても心地よかったです。
後半のプログラムは、ショパンの《ピアノ・ソナタ第3番
ロ短調》op.
58。この曲は阿見さんが「いま最も弾きたい曲だった」とおっしゃっていましたが、まさにその意気込みが伝わってくるような、力強く情熱的な演奏でした。特に第3楽章において、音楽が深みへと沈んでいき、さらにその後徐々に浮かび上がって第4楽章へと向かっていく際の表現が秀逸でした。アンコールは、ショパンの《ノクターン
ヘ長調》op.
15-1。力みのない豊かな音色で奏され、曲が終わったときの空気感、余韻も素晴らしかったです。会場からは温かな拍手が送られ、和やかな雰囲気のなか演奏会は閉じられました。
ソロだけでなく、室内楽の分野でもご活躍され、今春からは大学で後進の指導にもあたっていらっしゃるという阿見さん。今後ますますのご活躍を期待しています。
(Y. T.)
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ピアノリサイタル