ランチタイムコンサートの4日目は、現在東京藝術大学音楽学部3年に在学中の千葉遙一郎さんです。千葉さんは、一昨年の日本音楽コンクールで第2位及び岩谷賞(聴衆賞)を受賞した実力派のピアニストです。
テーマは〜多彩な性格小品としてのプレリュード〜。ショパンの「24の前奏曲Op.28」を千葉さんは、「バラして配置を換え、他の曲と組み合わせることによって、1曲1曲の性格に光を当てる。」とプログラムに書いています。その言葉どおり、最初に第1番から第4番までを演奏し、バッハを挟んでから第20番を弾き、更にスクリャービンやドビュッシーを挟んで最後に第22番から第24番までを演奏する、というプログラム構成でした。
まず最初にショパン「24の前奏曲
Op.28」から“第1、2、3、4番”を、引き続いてJ.S.バッハ「平均律クラヴィーア曲集
第1巻」から“第8番
BWV853”を演奏しました。ショパンの前
奏曲“第4番”に続いてバッハの「平均律
第1巻」の“第8番”を演奏したのは、両曲の雰囲気を崩さない全く自然な流れで、とても良い選曲だったと思います。ショパンのロマン性とバッハの端整さとが対照的で、千葉さんのセンスの良さが伺えました。
更に続いてショパンの「24の前奏曲」から“第20番
ハ短調”と「スケルツォ 第3番
嬰ハ短調」を演奏しました。前奏曲“第20番”の冒頭の強音でバッハの世界からショパンの世界へ引き戻され、「スケルツォ
第3番」では、力強さと共にキラキラとした透明感を感じさせてくれました。 ここまで曲間はわずかな静寂だけで、ここで初めて拍手を受けました。 再び登場した千葉さんの次の曲は、スクリャービンの「ピアノ・ソナタ
第4番Op.30」です。明るい響きの作品で、まだショパンの影響が残っていますが、ロマン的な抒情に流されないしっかりした演奏でした。 続いてドビュッシー「前奏曲集
第2集」の“1.
霧”での晩年の調性崩壊へ向かうようなもやっとした雰囲気から、同「前奏曲集
第1集」の“8.
亜麻色の髪の乙女”で、元の世界に戻されたようなほっとした感覚になり、続くショパン「バラード第4番
ヘ短調
Op.52」で、ショパンの音楽に身を委ねられる幸せを感じました。 最後に「24の前奏曲
Op.28」から“第22、23、24番”を持ってきたのは、素晴らしいプログラム構成だと思います。「24の前奏曲」をバラした理由が分かるような選曲であり、曲順だったと言えるでしょう。ここに千葉さんの感性の素晴らしさを感じます。 超満員の聴衆からの熱い拍手に応えてのアンコールは、ラフマニノフ=コチシュ「ヴォカリーズ」でした。
(K.Y.)
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