ショパン生誕200周年を記念してスタートしたコンサートシリーズ『ショパン・フェスティバル』は、今年10回目を迎えました。6日間にわたる会期中は、ショパンを軸としたプログラムによるリサイタル・レクチャーを楽しめます。今年は日本とポーランドの国交樹立100年にあたることからショパンに加え、邦人・ポーランド人作曲家で構成された多様なプログラムを11名のピアニストが披露。
初日のイブニングコンサートは“ポーランドと日本・虹のかけ橋”と題した、田崎悦子さんの公演が行われました。
演奏会の始まりは愛らしい1曲、パデレフスキの《ミセラネア》より〈メヌエット〉。ショパンは〈ノクターンOp.72-1〉と、〈マズルカ〉を4曲(Op.6-2、Op-17-4、Op.24-2、Op.67-4)。前半最後は田崎さんの代名詞、バルトークの《戸外にて》。血湧き肉躍る、野性味あふれる表現に引き込まれる演奏でした。
後半の頭に据えられたのは、池辺晋一郎〈J.S.の声の方へ〉。J.S.バッハの名のスペルで編んだ音列を軸に、《マタイ受難曲》の一節が交わりながら発展していく作品です。ヴァイオリニスト・ピアニストとしても知られるポーランドの女流作曲家、グラジナ・バツェヴィチ(1909〜69年)の作品からは《ソナタ第2番》を。鋭い強音の後に続く音の奔流、民族的な響きなど、どこかバルトークに通じる雰囲気があり、心がえぐられる感覚を覚えます。
締めくくりはショパンの〈幻想ポロネーズ〉、そして拍手に応えたアンコールは〈ノクターン(遺作)〉でした。
「作品を通じた作曲家との対話こそが演奏。私は作曲家と聴衆を繋ぐ黒子でありたい」と常々インタビューでお話しされている田崎さん。心からの愛を感じる演奏は、作曲家たちの切なる思いが伝わってくるものでした。
(R.K.)
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