日本・ポーランド国交樹立100周年記念のメモリアルイヤーに10周年を迎えた今回のショパン・フェスティバル、2日目のランチタイムコンサートは、伊舟城歩生(いばらきあゆむ)さんです。現在東京音楽大学ピアノ演奏家コース4年に給費奨学生として在学中の伊舟城さんは、昨年の第2回Shigeru
Kawai国際ピアノコンクールで第3位になった実力の持ち主で、それ以外にも内外のいろいろなコンクールやオーディション等で多くの受賞歴があり、数多くの演奏会に出演しています。
「〜愛の調べ〜」と題した伊舟城さんは、ショパンの作品から始まり、リスト、モシュコフスキの編曲作品、そして武満 徹という幅広いプログラムを組みました。「ピアノという楽器を通して、ショパン作品の魅力はもちろん、詩やオペラの世界の愛まで堪能して頂けたら」とプログラムに書いています。
伊舟城さんのプログラムは、まずショパンから。「前奏曲
嬰ハ短調 Op.45」、「即興曲 第3番 変ト長調
Op.51」、「2つのノクターン
Op.55」、そして「ポロネーズ 変イ長調
Op.61《幻想ポロネーズ》」。ノクターンのような「前奏曲」をしっとりと演奏し、「即興曲」をテンポ良く軽やかに弾き進め、情感に溢れた「2つのノクターン」、そして「幻想ポロネーズ」では幻想的なもやっとした感じも見せながら、クライマックスに向かっての盛り上がりは力強さが感じられました。
続いてショパンの歌曲をリストがピアノ用に改編した「6つのポーランドの歌」より第5番《私の愛しい人》。ショパンの歌の思いを見事に改編したリストの巧みさを上手く表現していました。
次の武満 徹の「遮られない休息」は3曲あり、Tは1952年に、UとVは59年に書かれた曲ですが、Uの「静かに残酷な響きで」と対照的に、Vは「愛の歌」という指示があり、3曲中最も短いものです。伊舟城さんは音を紡ぐように演奏し、静かに終えました。
最後はポーランドの作曲家モシュコフスキのワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」から《イゾルデの愛の死》を、オーケストラの音を想起させるような響きで演奏し、イゾルデの死と共に静かに終わり、温かな拍手に包まれました。
拍手に応えてのアンコールは、プロコフィエフのバレエ音楽「シンデレラ」から6つの小品の第6番《愛を込めて》。タイトルどおり最後まで愛の音楽でした。
(K.Y.)
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ランチタイムコンサート