5月29日のショパン・フェスティバル2019
in表参道のランチタイムコンサートは青島周平さんのご登場でした。今回のランチタイムコンサートのテーマは「多種多様な即興曲」と題されて、自由な形式を持つ曲がプログラムに組み込まれました。
はじめにショパンの《スケルツォ第3番嬰ハ短調op.39》と《スケルツォ第4番ホ長調op.54》が演奏されました。第3番はオクターブの強烈な曲のつかみから始まり、問いと応答のようなやり取りがみられる二つめの主題では、和音の移り変わりを味わう丁寧な演奏で、調性によるニュアンスへの意識が感じられました。第4番はショパンの4曲のスケルツォの中でも特にスケルツォらしい曲。音が愛らしく飛び跳ねる中、対話をしているようで、耳に心地よい絶妙なタッチでした。
次に演奏されたのは、橋本國彦(1904-1949)の《日本狂詩曲》。当時東京音楽学校(現東京芸術大学)で教鞭をとり、のちに門下から有名な作曲家を輩出した作曲家です。《日本狂詩曲》は使われている音階やリズムなど、どこかで聞いたことがあるようで、祭りの光景が思い浮かびます。一方でドビュッシーのような繊細さも併せ持ち、演奏される機会が多くないものの魅力のある曲でした。「あまりピアノでは聞かないお祭りの要素と、リストやドビュッシーの影響を受けた音型やテクニックが混ぜ合わさった素敵な作品」と説明されたように、選曲した青島さんの思いが伝わる演奏でした。
続いて、モシュコフスキ《幻想即興曲Op.6》、ショパン《即興曲第1番変イ長調Op.29》《ポロネーズ 変イ長調Op.61「幻想ポロネーズ」》も演奏されました。明るく徹し堅実な印象を受けるモシュコフスキと比較して、ショパンの2曲はどちらも、要素が反復される中で心に光が差したり陰ったり、色の変化が大きく感じられました。精神的にも肉体的にも不調の頃に書かれた「幻想ポロネーズ」は移り変わりがめまぐるしく多彩な表情を見せ、それが曲全体に深みをもたらし、青島さんの没入した演奏で心が揺り動かされました。
最後は客席からの大きな拍手に応えてショパン《ノクターン第6番Op.15-3》が演奏され、コンサートは幕を閉じました。
(W.T.)
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ランチタイムコンサート