日本ショパンピアノコンクール2010 二次予選 開催レポート
2010年3月27日(土) 
主催:日本ショパン協会
協賛:(株)河合楽器製作所
会場:洗足学園前田ホール

日本ショパンピアノコンクール2010 第2次予選(前半)

多胡光夏

武内みさき

日高志野

石井楓子

洗足学園前田ホールでは、この日も若きピアニストたちによる熱き競演が繰り広げられました。この日演奏されたのは、27名の参加者のうち厳しい審査を通過された9名の方々です。ソナタと自由曲で45分のプログラムを演奏するという過酷な課題にもかかわらず、9名のソリストたちは高い集中力と音楽性でもって素晴らしい演奏を聴かせてくださり、このコンクールのレベルの高さを改めて痛感させられました。

 前半は、4名の方々が演奏されました。

 まず1人目は、多胡 光夏さん。曲目は、≪幻想ポロネーズ op.61≫、≪マズルカop.50-3≫、≪ソナタ第3番op.58≫です。奥深く表情豊かな音色で、ストーリー性に溢れ、各曲の持つ性格を鮮明に表現したような演奏は心に響くものがありました。

 続いて2人目は、武内 みさきさん。曲目は≪幻想曲 op.49≫、≪ノクターンop.62-2≫、≪ソナタ第3番op.58≫です。エネルギーに満ち溢れ、前に突き進んでいくような演奏で、特に≪ソナタ第3番≫での伴奏のゆったりとしたリズムにのせて、旋律が澄みきった音色で爽やかに歌われていたラルゴ楽章は印象的でした。

 3人目は、日高 志野さん。曲目は≪幻想ポロネーズ op.61≫、≪マズルカ op.63-3≫、≪ソナタ第3番op.58≫です。知的で、各曲ともセンス良くまとめられており、一音一音を大切にしながら、自然な流れで演奏されていました。

 そして前半最後は、石井 楓子さん。曲目は≪ノクターン op.37-2≫、≪マズルカop.24≫、≪ソナタ第3番op.58≫です。ステージと一体化して、身体全身から音楽が溢れ出ているような演奏は、コンクールということを忘れてしまうほど素晴らしいものでした。

  4名の演奏はそれぞれ個性的で、聴いている時間を忘れてしまうほど感動的なものでした。若き演奏家たちの競演はまだまだ続きます。

(K.S.)

 

 日本ショパンピアノコンクール2010 第2次予選(後半)

北端祥人

宮崎翔太

森島嘉奈子

大伏啓太

小川瞳

 日本ショパンピアノコンクール2010、第2次予選に進まれた9名のうち、午後に演奏された5名を筆者は聴きました。 

 午後の一人目、北端祥人さんは≪アンダンテ・スピアートと華麗なる大ポロネーズ≫と≪ソナタ第3番≫を演奏。ポロネーズのリズムの活きた輝かしい演奏が印象的でした。

 続く宮崎翔太さんは、≪マズルカOp. 17-1〜4≫、≪ノクターンOp. 27-1≫、そして≪ソナタ第3番≫を演奏しました。小品の雰囲気の違いもうまく表現され、1つのステージとして魅力的に構成されていました。

 森島嘉奈子さんは、≪ソナタ第3番≫、≪ポロネーズOp. 44≫、≪ノクターンOp. 27-2≫を、とてもしなやかで美しく表現していました。

 次は大伏啓太さん。曲目は、≪幻想ポロネーズ≫と≪ソナタ第3番≫です。深みのある音楽の世界が広がりました。

 最後は小川瞳さんで、≪ノクターンOp. 62-2≫、≪バラード3番≫、≪ソナタ第3番≫を演奏しました。温かさのある音で、会場全体を包み込むような演奏でした。 

 2次予選の課題は、ショパンのソナタ1曲と任意の曲からなるプログラム。とくにソナタは、全員が第3番ロ短調Op. 58を演奏したため、その解釈や個性の違いがはっきり聴きとれました。これは、コンクールならではのことです。そして、45分という時間制限の中、いかに自分自身の音楽を表現し切れるか。どの演奏者も1音1音考え抜き、よく弾き込まれていることが伝わってきて、誰が本選に進んでも良いと思える素敵な演奏ばかりでした。 

 2010年、ショパン・イヤーの今年は、ショパンの演奏を聴く機会が普段にも増して多くなることでしょう。彼らの素晴らしい演奏、そしてショパンへの情熱が、今年の音楽界を豊かに彩ってくれることを期待したいと思います。

 (M.)