シンポジウム『理想的なショパンの楽譜とは?』

日本音楽学会では、10/5(土)PM2:00より東京音楽大学にて、
ショパンシンポジウム
「理想的なショパンの楽譜とは?−21世紀の資料研究から見えるもの−」を行います。
入場無料、事前申込み不要、一般参加可ですので、よろしければお気軽にご参加ください。
◎日時:
10/5(土)PM2:00〜4:45(予定)
◎会場:東京音楽大学A館地下100会議室
◎コーディネーター:加藤一郎さん
◎パネリスト:岡部玲子さん、加藤一郎さん、武田幸子さん、多田純一さん
◎問合せ:日本音楽学会 東日本支部 
msj-higashi@office.nifty.jp

<要旨>

 様々なエディションが出版されているフリデリク・フランチシェク・ショパン Fryderyk Franciszek Chopin(1810-1849)の楽譜は、原典版が主流となる20世紀後半以降、約半世紀に渡り「どのエディションが良いのか」「どのヴァージョンが正しいのか」ということが議論され続けてきた。現在では「ショパンの最終的な意図」を確定することはできず、複数のヴァリアントが認められることについては概ね共通認識となっている。

 21世紀に入り、ショパン作品に関する資料研究は急激な進展が見られる。2001年に行われた国際学術ショパン学会では「資料の全体性」および「作品の全体性」のどちらを優先するかという校訂の方法が明確にされた。一方で、ほぼ同時期に「パラダイム手法」という方法が提案、実践された。また、資料の分類では「放棄された自筆譜」という分類が共通認識となったのもこの頃のことである。PWM社による『ナショナル・エディション』に加え、21世紀に入ってからはペータース社とヘンレ社が新版を出版しはじめ、ショパンの楽譜は新たな局面を迎えている。さらに2010年のショパン生誕200年に向けて様々なプロジェクトが実施された。資料研究に関わるプロジェクトは主に次の3点である。

1.『ショパン手稿譜ファクシミリ全集』の順次刊行。

2. ウェブサイトChopin's First Editions Online(CFEO)が立ち上げられ、すべての初版が示された。

3. ウェブサイトOnline Chopin Variorum Edition(OCVE)が立ち上げられ、小節単位で様々なヴァリアントを比較することができるようになった。

 これらのプロジェクトにより、入手することが困難であった一次資料の多くはユーザーが直接確認することが可能になっている。しかしながら、多くの情報を入手することが可能になるにつれ、それらの情報をどのように使用(あるいは選択)するのかという事が問題となってくるのである。

 本シンポジウムでは、資料研究の歴史的変遷を踏まえつつ、大きく資料研究が進んだ現在にはどのような問題点と課題が見られるのかを考察する。理想的なショパンの楽譜とはどのような楽譜なのだろうか、現状のショパン研究に対する認識に一石を投じたい。