毎年恒例の「ショパン・フェスティバル in 表参道
2017」3日目のイブニングコンサートは、ソリストとして、また室内楽奏者としても活躍し、東京藝術大学やお茶の水女子大学で後進の育成にも携わっているピアニストの白石光隆さんのリサイタルです。
今年のフェスティバルのテーマは「ワルツ」。ショパンの多彩なワルツと、ショパンの霊感を触発させる源となった様々な作曲家の作品にも触れる……ということで、白石さんが選んだ曲目は、世界のワルツとも言えるような多岐にわたるプログラムでした。それで「ワルツの鎖〜ほとばしるビートの乱舞〜」とサブタイトルが付けられていました。
まず前半は、ブラームスのワルツ第15番変イ長調Op.39-15という、よく知られている愛らしいワルツで始まりました。弾き終わった後、マイクを持ってのトークで、プログラムに曲目解説を書かなかったのでトークでお話ししますと仰り、ワルツやワルツの前身と言われるレントラーのことなどを話され、レントラーを繋いだシューベルトの「12のドイツ舞曲」D.790を演奏しました。次にロシアのワルツ、プロコフィエフの「シンデレラ」からの6つの小品Op.102より1曲目の『ワルツ』を演奏、更に今度はフランスのワルツが紹介され、プーランクの即興曲第12番変ホ長調「シューベルトを讃えて」、ドビュッシーの「レントよりおそく」、そしてサティ「金の粉」の3曲が続けて演奏されて前半が終了しました。
後半の1曲目は、吉松 隆の「ベルベットワルツ」。この曲は本来ギターのために書かれたそうですが、その後いろいろな楽器のためにアレンジされたそうで、白石さんはとてもきれいに演奏されました。続いてはアメリカのモダン・ジャズ・ピアニストのビル・エヴァンスの「ワルツ・フォー・デビィ」を軽快に、楽し気に演奏しました。ここまで、ドイツ、オーストリア、ロシア、フランス、日本、アメリカと「世界のワルツ」が紹介され、この後ようやくショパンのワルツの登場です。
まず1曲目にワルツ
変ホ長調Op.18「華麗なる大円舞曲」、次にイ短調Op.34-2「華麗なる円舞曲」、そして変ト長調Op.70-1、4曲目は嬰ハ短調Op.64-2、最後に変イ長調Op.34-1「華麗なる大円舞曲」と、5曲続けて演奏されました。
世界のワルツもショパンのワルツも、それぞれの曲の素晴らしさを聴衆に見事に伝えてくれました。幅広いレパートリーを持つ白石光隆さんだからこそのプログラムでした。演奏もトークもとても楽しめたコンサートでした。
聴衆の盛大な拍手に応えてのアンコールは、映画「サウンド・オブ・ミュージック」の中の曲でジャズ・アレンジされている「My
favorite
things」、ショパンのワルツ第9番変イ長調「別れ」、そして最後にバッハの「Arioso」の3曲を演奏し、しっとりと落ち着いた気分で終了しました。
(K.Y.)