to top > 須関 裕子 ピアノリサイタル

須関 裕子 ピアノリサイタル 開催レポート
ロマン派ソナタの精髄 〜 2大傑作が描く激情の世界〜
2019年5月29日(水) 開演18:30 (開場18:00)
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ」

 『ショパン・フェスティバル』3日目のイブニングコンサートに、須関裕子さんが出演しました。2001年に開催された第2回ハリーナ・チェルニー=ステファンスカ国際ピアノコンクールの優勝者として注目を浴び、現在アンサンブルピアニストとしても活躍されています。

 須関さんのプログラムはショパンと同じ年に生まれたシューマン、ロマン派ふたりの作曲家による“ソナタ”をメインに据えた構成。また、今年は日・ポーランド国交樹立100年にあたることから、フェスティバル全公演において、邦人とショパンや他のポーランド人による作品が選曲されています。冒頭で須関さんが取り上げた邦人作曲家は、三瀬和朗。〈ピアノのための「ル・タン・プロフォン」〉は、意識の奥底(タイトルは直訳で“深い時間”の意)から呼び起こされた響きを描いています。繊細さ、激しさ、鋭さなど、多様な響きを往来する興味深い演奏でした。続くパデレフスキ《ミセラネア》より〈ノクターン〉は、やさしく静かに。そして前半のハイライト、シューマンの《ソナタ第1番》では、暗く激しく情熱的な感情、混沌とした心の叫びが見事に表現されていました。

 後半はショパンの2曲。デビューアルバムにも収録されている〈舟歌〉は、流れを大切にしたしなやかな演奏です。最後の《ソナタ第2番》は、情感をていねいに込めた重厚なもの。慟哭、どこまでも高く飛翔していく魂など、限りない精神の深さを聴かせました。

 アンコールはショパンの〈ノクターン第2番〉と〈英雄ポロネーズ〉。「ここパウゼは、初めてソロリサイタルを開いた会場でもあります。あの頃よりも今日の方が緊張しましたが、皆さんがあたたかく聴いてくださったことに感謝します」と述べ、笑顔で締めくくられました。

(R.K.)

 

 to top > 須関 裕子 ピアノリサイタル