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外山 啓介 ピアノリサイタル 開催レポート
〜バッハとショパンの最高傑作〜
2019年5月30日(木) 開演18:30 (開場18:00)
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ」

 

 

 第10回を迎えたショパン・フェスティバル2019 in 表参道、5月30日のイブニングコンサートは、全国各地のリサイタルでご活躍されているピアニスト外山啓介さんがご登場しました。日本・ポーランド国交樹立100周年記念として、ショパンの名曲のほか、日本の作曲家の作品が各プログラムに組まれている本フェスティバル。今回のコンサートは「バッハとショパンの最高傑作」と題され、バッハとショパンの作品や、ポーランド出身の作曲家パデレフスキ、日本人の武満徹の作品がプログラムに並びました。

 心地よく温かさを感じる、甘くロマンティックなパデレフスキ作曲《ノクターン変ロ長調Op.16-4》でコンサートは幕開け、続いて武満徹作曲《雨の樹 素描 I・II 》が演奏されました。水は多くの作曲家に魅力的なモチーフとして作品に描かれています。雨の樹では響きがフォーカスされ、音の減衰、ペダルによって伸びている音から聞こえる倍音など、耳を研ぎ澄ました演奏が印象的でした。前半最後のバッハ作曲《パルティータ第6番ホ短調BWV830》はトッカータ、アルマンド、コレンテ、エール、サラバンド、テンポ・ディ・ガボット、ジーグから成る、バッハの高い芸術性があらわれた作品。旋律が多層で、それぞれが自立して存在感を放っており、それらの掛け合いを通して音楽が高揚していき、一貫して緊張感が保たれていました。

 後半はバッハから大きな影響を受けたショパンの2作品《ノクターン ロ長調Op.62-1》、《ピアノソナタ第3番ロ短調Op.58》のプログラムです。ノクターンは客席にきらびやかな音を放つというよりも、香り立つ音でホールを満たすような演奏で、サロンで活躍したショパンの人生を想起させるかのよう。続くピアノソナタは、外山さんがコンクールやリサイタルなど大事な場面で演奏されてきたそうです。多彩な和音が曲の奥行きを深くし、壮大な音楽の流れ込みに魅了される第1楽章に始まり、軽やか、かつ落ち着いた雰囲気を持つ第2楽章、甘美で叙情的な第3楽章、力強さに圧倒された第4楽章。特に第1、4楽章では次の展開に惹きつけられる、気持ちが高ぶる演奏でした。

 最後はアンコールのショパンの遺作のノクターンで、しっとりと、しとやかにコンサートを締めくくられました。満席の客席は興奮が冷めやらず、外山さんに盛大な拍手が送られました。

(W.T.)

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