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菊地裕介 ピアノリサイタル 開催レポート
〜ワルツが廻る〜
2017年5月23日(火) 19:00開演(18:30開場)
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ」

 

 ショパンを軸に1週間にわたり昼夜2度のコンサートを開催する、恒例のコンサート『ショパン・フェスティバルin表参道』。2日目のイブニングコンサートは菊地裕介さんによるステージです。

 菊地さんの切り口は“ワルツ”。さまざまな作曲家・時代のワルツで、音楽史を俯瞰する内容です。前半はショパンと交互に別の作曲家のワルツが並びます。〈華麗なる円舞曲Op.34-1〉、シューベルト《高雅なワルツ集》、〈華麗なる円舞曲Op.34-3〉、ラヴェル〈高雅で感傷的なワルツ〉、そして〈ワルツ第5番〉の5曲です。なかでもラヴェルはピアノ作品全集を録音されているだけあり、柔軟で透明感ある音色が印象に残りました。

 後半はリストの〈忘れられたワルツ第1番〉、シューマン《謝肉祭》、締めくくりはふたたびのリストで〈メフィスト・ワルツ第2番〉。ショパンが抜かれた3曲の“ワルツ”は、その言葉から思い浮かぶ高雅さとは対極の作品も含まれ、とくに終曲の悪魔的で激しい演奏は刺激的なものでした。

 今年は帰国から10年が経ち、ご自身でも節目の年と位置付けられています。「昔できていたことができなくなることもあるけれど、その反対も然り。その日その日に感じたことを音にする“即興的”な音楽ができるようになってきた」と言います。現在、東京都の未来を長期的に考える意見交換会『東京未来ビジョン懇談会』にも参加しており、活動の域を拡げている菊地さん。「ピアニストとして過去の作曲家が遺した作品を、未来へ繋げる」という言葉が印象的でした。演奏家、指導者としてはもちろん、今後もさらなる多才を発揮されることでしょう。アンコールはショパンの《2つのワルツ》と、リストの《ウィ―ンの夜会》より第6番でした。

(R.K.)


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